はてな市民になりました

山手線での出来事です。大崎にて扉が閉まりかけた時、一人の小太りが駆け込み乗車をして扉に挟まれました。扉が開いて、その男は乗れたのですが、小太りはスーツにリュックという私にとってはありえない出で立ちでした。一息ついて彼は肩から小太りリュックを網棚の上に置いたのですが、そこで事件はおきました。

カタカタカタカターー

リュックから、何かが大量に落ちたのです。大量に落ちたうちのいくつかは神棚に座っていた男女にも直撃し、その何かは床に散らばりました。

ガムでした。

小太りはリュックの中にボトルガムを入れていたのですが、ボトルガムの口は開いたまま、それを入れておいたリュックのチャックも開いたまま、全てがその小太りのだらしなさを象徴するかのように開けっぴろげであり、それが要因となって発生した都会の盲点のような事件でした。 問題は、ガムです。床に散らばったガムです。付近のみんなが散らばったガムを見つめています。小太りを見つめています。マネキンのようにみんなが固まっています。張本人も含め、ガムに比較的近くにいる人は、

『これは拾うべきか』

と悩んでいるのです。だって床に落ちたガムですから。すなわち、もう、ゴミですから。でもそれをまだみんなゴミとして認識していないのです。ひとりの女性がガムを拾いだしました。すると隣にいた男もガムを拾いだしました。みんな呪縛から解かれたかのようにガムを拾いだしました。もちろん小太りも自らガムを拾いだしました。小太りは、自ら拾ったガムや、拾ってもらったガムをそのままボトルの中に戻しました。 『すいません!すいません!』と言ってました。

私は、比較的その現場から離れたところで座っていたのですが、この比較的現場から離れたところの3、4人が一部始終を見ながら携帯電話を取り出し、何かを打ち出したのです。その時に、彼らに対して非常に親近感が湧きました。みんなきっと、ガム、ガムって打ってるんだろうなと思うと、ちょっと心が暖かくなりました。